帰化は法務大臣が官報に帰化許可の告示をした日から効力を生じますが、帰化した者を戸籍に記載するためには、官報告示の日から1か月以内に、戸籍法上の帰化届をしなければなりません。
この届出は、法務大臣の帰化の許可によって日本国籍を取得したことを報告する届出ですが、これによって帰化した者が本籍Yあ氏名を事由に定めることができるようになるので、報告的届出と創設的届出の両方の性質を併有する届出といわれています。
(1) 届出人
帰化の届出は、帰化した者がしなければなりません。
ただし、その者が15歳未満の時ときは、その者の法定代理人が届出義務者となります。
(2) 届出地
届出地は、帰化者又は届出人の所在地です。
新本籍地に届出することもできます。
(3) 届出期間
官報告示の日から1か月以内にしなければなりません。
ただし、戸籍実務の取扱いでは、上記の届出期間の起算日については、当該帰化申請を受理した法務局又は地方法務局の長において帰化者に対して「帰化者の身分証明書」を交付することになるので、その交付を受けた日を起算日とする取扱いをして差し支えないとされています。
(4) 帰化届書の記載事項
① 帰化許可の告示の年月日
② 帰化の際に有していた外国の国籍
③ 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
⓸ 配偶者の氏名及び本籍、配偶者が外国人であるときは、その氏名及び国籍
⑤ その他法務省令で定める事項
ⅰ 出生に関する事項
ⅱ 認知に関する事項
ⅲ 現に養親子関係の継続する養子縁組に関する事項
ⅳ 現に婚姻関係の継続する婚姻に関する事項
ⅴ 現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項
ⅵ 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
上記の各事項については、帰化した際に法務局又は地方法務局の長から交付される「帰化者の身分証明書に記載されているので、帰化届書の「その他」の欄には、「帰化事項の他に記載すべき身分事項は、別紙『帰化者の身分証明書のとおりです。」と記載すれば足ります。
なお、帰化届書の標準様式には、その旨が印刷して表示されています。
(5)帰化後の氏名・本籍
帰化した者は、新たに氏名と本籍を創設しなければなりませんが、その選定は自由です。
氏名に用いる文字は、原則として、戸籍法施行規則60条に規定する文字を用います。
ア 夫婦の氏と本籍
夫婦については、同氏であって、戸籍も同一でなければなりませんので、夫婦がともに帰化した場合又は夫婦の一方が日本国民であって他の一方が帰化した場合には、夫婦の協議によって、夫または妻のいずれかの氏を称するかを定めなければなりません。
イ 親子の氏と本籍
親子がともに帰化した場合又は帰化した者の親が日本国民である場合には、帰化の届出の際に子が親と異なる氏又は本籍を定めた場合を除き、子は親の戸籍に入籍します。
ただし、子に配偶者がある場合には、子について新戸籍を編製します。
なお、氏名に用いる文字については、戸籍法施行規則60条に規定する範囲の文字によるのが原則です。
(6) 添付書類
ア 法務局又は地方法務局の長が発行した帰化者の身分証明書を添付します。
イ 帰化者は、帰化届書に帰化前の身分事項を記載し、同事項を証すべき書面を添付しなければならないとされていますが、帰化者の身分証明書に同事項の記載がある場合は、その添付を要しません。
(7) 戸籍の処理
帰化届について、帰化者の入籍の記載をします。
帰化者の戸籍に記載すべき身分事項は、帰化事項(帰化年月日、帰化の際の国籍、従前の氏名)のほか、帰化者の身分証明書に記載されている事項です。
帰化者については、既存の戸籍に入る場合を除いて、原則として新戸籍を編製します。
① 夫婦がともに帰化した場合は、夫婦について新戸籍を編製しますが、何れを戸籍の筆頭に記載するかは、帰化届書に記載されたところによります。
すなわち、外国人夫婦が帰化した場合には、帰化届の際に、夫婦の協議により夫又は妻のいずれの氏を称するるかを定めた上、これを届書に記載して届け出ることとされています。
子の記載に従って、夫を筆頭者とする戸籍又は妻を筆頭者とする戸籍を編製することになります。
② 日本人の配偶者である者が帰化した場合において、その日本人の氏を称すると定めたときは、その者が戸籍の筆頭者であれば、帰化した配偶者はその戸籍に入籍します。
日本人の配偶者が筆頭者でないときは、その者を筆頭者として新戸籍を編製し、これに日本人の配偶者を入籍させることになります。
⓷ 親子がともに帰化した場合又は帰化した者の親が日本人である場合には、子が特に親と異なる氏又は本籍を定めたときを除いて、子は親の戸籍に入ります。
帰化者の戸籍が編製された後に、帰化者の転籍、婚姻、養子縁組等により新戸籍が編製され又は他の戸籍に入籍させる場合には、帰化事項を移記することを要しません。