こんにちは!

今回は「遺言の執行」(遺言を内容どおりに実現するための行為)ということについて見ていきたいと思います。

 

まず、遺言を発見した場合にはどうしたらよいかということから見ていきます。

 

遺言者が亡くなったときは、公正証書遺言の場合を除いて、遺言書の保管者または発見した相続人は、これを家庭裁判所に提出して、検認の手続を受けなければなりません。

この検認というのは、遺言書の現状を保存し、偽造されたり変造されたりするのを防ぐために、家庭裁判所が遺言書について行う検証の手続です。

もしこれに違反すると5万円以下の過料が課せられます。

封印してある遺言書を勝手に開封した場合も同様です。

裁判所は封印のある遺言書の検認の申立があった場合には、相続人またはその代理人に立会いの下で、これを開封することになっています。

なお、検認手続がなされていない遺言では、法務局で不動産の登記申請をしても受理してもらえません。

 

家庭裁判所で検認の手続きが済めば、遺言の内容を実行に移す(遺言の執行)ことができます。

この場合、遺言によってすぐ効果が生じるものと、特にその内容を実現するための行為(執行)が必要なものとがあります。

さらに、執行を必要とするものの中でも、認知や相続人の廃除及びその取消などのように、必ず遺言執行者が必要な場合と、必ずしもそうでない場合とがあります。

 

 

その遺言執行者が、遺言によって指定されている場合(遺言者は、遺言執行者を指定するか、または指定を第三者に委託することができます。

ただしこれは、必ず遺言によることが必要で生前に口頭ですることはできません)

についての注意点は次のとおりです。

 

  1. 遺言執行者に指定された者が就職を承諾するか、辞退するかは自由です。
  2. 上記の者が、承諾するかどうか態度がはっきりしない場合には、利害関係人は相当な期間を定めて、催告をすることができます。
  3. その期間内に相続人に対して確答がないときは、就職を承諾したものとみなされます。
  4. 未成年者及び破産者は、遺言執行者になることはできません。
  5. 遺言執行者は、相続財産の財産目録を作成してこれを管理し(遺言の執行が認知とか、相続人の廃除のみの場合は必要ありません)、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を有します。
  6. よって遺言執行者が選任されている場合には、相続人は、相続財産を勝手に処分することは許されません。
  7. 特定遺贈の場合の遺言執行者の権限は、遺贈された特定の財産の範囲に限られます。

 

遺言により遺言執行者が指定されていない場合、または亡くなった場合には、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができます。

 

なお、遺言執行者の指定がないと、預貯金の解約などに銀行所定の書類への相続人全員の押印や遺産分割協議書と、印鑑証明書の提出を求められるのが一般的です。

遺言執行者の指定があれば、押印は遺言執行者だけで預貯金の解約などを認めるのが一般的です。

ただし、相続人や受遺者が遺言執行者にもなっている場合には、銀行によっては、遺言執行者の押印だけによる預貯金の解約に応じない場合があります。

 

 

最後に、遺言内容と異なる遺産分割協議ということについて見ていきたいと思います。

 

相続人全員で遺言内容と異なる遺産分割協議をした場合、その協議と遺言のどちらを尊重すべきなのでしょうか?

遺言執行者がいない場合は、遺贈については放棄も認められていることから、受遺者と相続人の全員が同意すれば、遺言と異なる遺産分割協議も有効と考えられます。

遺言執行者がいる場合は、遺言執行者は法律上、遺言を執行する義務を負っているので、相続人は相続財産の処分など執行を妨げる行為をすることができないことになっています。

よって遺言執行者は、原則として遺言どおりに執行していくことになります。

 

一部の相続人が遺言の内容に違反して遺贈の目的物を第三者に譲渡し登記しても、相続人の処分行為は無効とされた判例があります(大審院S.5.6.16)。

ただし、遺言執行者が指定されている場合でも受遺者の放棄は自由ですから、その範囲で(放棄をした人が受取るべき財産について)、遺産分割協議を行うことも可能であると思われます。

 

今回はここまでにしたいと思います。