こんにちは!
今回より相続人に引き継がれる財産(相続財産)にはどのようなものがあるのかということを見ていきたいと思います。
まず相続財産の範囲として、相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務(一身専属的なものを除く)を承継します。
したがって、不動産や預貯金などの金銭債権、株券などの有価証券、契約上の地位などの他、借入金や保証債務のような負債も承継します。
プラスの財産だけしっかりもらってマイナスの財産は知らないなんて、虫のいいことは認められていません。
ただし、以下のものは相続財産に含まれません。
死亡退職金や遺族年金など、受取人が指定されているものは、被相続人から相続されるものというより、受給する人固有の権利と考えられていますので、相続財産には含まれないとするのが判例です。
生命保険金についても同様に、保険金受取人の固有の権利と解されていますので、相続の対象とはなりません。
したがって、生命保険金を受け取ったとしてもそれをもって相続を承認したことにはならないので、借金が多い場合などにあとで述べる相続放棄をすることも可能です。
このように民法では、生命保険金・死亡退職金は原則として相続財産にはあたらないことになっていますが、相続税法上は、これらのものは「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
もっとも生命保険金・死亡退職金については一定限度までは非課税となっています。
次に、相続財産として最もポピュラーである預貯金についてご説明いたします。
被相続人が死亡すると、被相続人名義の口座は凍結され入出金が一切できなくなるのですが、この凍結は自動的に解除されることはなく、相続人等の預貯金を相続した人が解除の手続きを行わない限りそのお金は使えないということになります。
そして従来の判例では、預貯金などの金銭債権(金銭の給付を目的とする債権で、受取手形や売掛金、貸付金などがあります)は分割債権(分割することができる債権で、債権者が複数いるもの)で、相続開始とともに各法定相続人に当然分割して承継されると解されていましたが、最高裁判所は2016年12月19日決定で判例変更を行い、従来と異なる見解を示しました。
簡単に説明すると、預貯金については法定相続分相当額を算定することはできるけれども、預貯金契約を解約するには共同相続人全員の合意が必要なので、預貯金は可分債権とはいえない=不可分債権になるから、遺産分割の対象財産になるということです。
現実の銀行取引においては、遺産分割が終了したり(遺産分割協議書)、相続人全員の同意書(相続人全員の実印と印鑑証明が必要)をとることなしには払戻しは行われないということになります。
そして預貯金の相続手続きは、基本的に金融機関窓口が営業している平日に行わなければならないため、案外面倒なものです。
手続き自体が難しいわけではないのですが、窓口営業時間内といったように時間の制約があったり、金融機関ごとに準備しなければならない書類が若干異なってきたりするので、厄介に感じることもあります。
このような場合は行政書士がお手伝いさせていただきますので、ご相談いただければと思います。
今回はここまでにしたいと思います。