こんにちは!
今回は改正相続法のうち、遺言制度に関する改正内容を見ていきたいと思います。
主な遺言制度に関する改正点としては、
①自筆証書遺言の方式緩和
②自筆証書遺言の保管制度の創設
があります。
(今回は、この他の遺言制度に関する見直しである、③遺贈の担保責任等、④遺言執行者の権限の明確化等の説明は省略します。)
(③遺贈の担保責任等、④遺言執行者の権限の明確化等については相続教室 第40回の記事をご覧ください)
①自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書によって遺言をするには、遺言者自ら「全文」を自書しなければなりませんでしたが、不動産や預貯金口座等の相続財産を特定するための「目録」については、自書の代わりに、目録の全頁に署名・押印をすれば有効とされます。
不動産については登記事項証明書、預貯金口座については通商のコピーを添付して、全頁に署名・押印すればよいことになります。
施行期日は、2019年1月13日からですが、この施行日以前に作成された自筆証書遺言には適用されないので注意が必要です。
②自筆証書遺言の保管制度の創設
自筆証書遺言を法務局に保管制度が設けられることになります。
施行期日は、2020年7月10日です。
保管を行うためには、遺言者自身が法務局に自筆証書遺言の原本を持参し、一定の手数料を支払ったうえで保管申請をします。
そして、相続が発生した後は、相続人・受遺者・遺言執行者は法務局に対して、遺言書の閲覧等を請求することができ、この手続きが行われれば、法務局から他の相続人に対して遺言書を保管していることが通知されます。
また、この制度を用いた場合は家庭裁判所での「検認」の手続を省略することができます。
このように、相続法改正後は、自筆証書遺言が活用しやすくなってきます。
しかし、自筆証書遺言の方式が緩和され、保管制度ができたからといって、公正証書遺言が不要となるわけではありません。
法務局は法務省令で定める様式にしたがっているかどうかという点では遺言の中身を確認してくれますが、あくまで保管するために必要な範囲にとどまります。
遺言の内容(争続にならないように一部の相続人の遺留分を侵害していないか、遺言執行者の指定がなされているかなどの内容面の検討)についての審査や確認はしてくれません。
せっかく遺言書を作成するのであれば、「残された者がもめることのないようにしたい」などの一定の目的をきちんと達成する中身になっているかどうか、専門家に相談して確認することは必須だといえます。
また、公正証書遺言の場合には、作成の際に公証人や証人2名が立ち会うので、作成時に遺言者がどの程度の理解力を備えていたかということについても、後で証言できる人を確保できることになります。
そして方式についても、より記載にミスが起こる可能性の少ないのが公正証書遺言です。
以上のことからも、より確実に遺言内容をを実現したいとお考えの場合は、手間と費用をかけてでも公正証書遺言を作成しておくほうが望ましいといえるのではないでしょうか。
今回はここまでにしたいと思います。