こんにちは!
今回はまず、遺言で定めることができる事項について見ていきたいと思います。
遺言で定めることができる事項は以下のとおりで、それ以外の事項は書いてあっても効力はありません。
(1)遺言でしかできないもの
①未成年者の後見人の指定
②後見監督人の指定
③相続分の指定またはその委託
④遺産分割方法の指定またはその委託
⑤一定期間の遺産分割の禁止(最大5年間)
⑥遺産分割における共同相続人間の担保責任の指定
⑦遺言執行者の指定またはその委託
⑧遺贈の減殺方法の指定
(2)遺言だけでなく、生前行為によってもできるもの
①認知
②相続人の廃除またはその取消
③寄付行為
④信託
そのほか、特別受益者の相続分についての特別の意思表示や、
祭祀の主宰者(葬儀を主として執り行う人のこと 喪主)の指定などが遺言でできる行為とされています。
また、法律上の効果はありませんが上記以外の内容を盛り込むこともできます。
これを「付言事項(ふげんじこう)」といいます。
たとえば、
①家族への気持ちや感謝の言葉
②遺言書を書いた理由や財産配分の理由
③財産以外のことについて頼んでおきたいこと
などを盛り込んでおくことで、遺言者の想いを残された方々へ伝えることができます。
思いが込められた付言事項であれば、残された方々もきっと真摯に遺言者の気持ちを受け止めてくれることでしょう。
付言事項を書いておくことで、財産の配分に不満があっても、残された方々が理解してくれる可能性は高まり、それがひいては円満な相続を実現することになります。
次に、遺言を取り消す(撤回)には、ということについて見ていきます。
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その遺言は取り消されたものとみなされます。
また、遺言者はいつでも遺言の方式にしたがって、前にした遺言を取り消すことができます。
遺言の方式とは普通方式の遺言であれば、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言を指します。
遺言が二通以上あって、後のものと前の者が抵触する場合には、後の遺言で前の遺言の抵触部分を取り消したものとみなされます。
遺言は1番新しいものが優先されるからです。
次に、遺贈の種類とその効果ということについて見ていきます。
内縁の妻・息子の嫁、養子縁組をしていない子どもなど、法定相続人以外の人に遺産を残したい場合は遺贈という手段があります。
遺贈とは、遺言で財産を贈与することです。
遺贈には、包括的に相続財産の全部または何分の一を送るという形で遺贈する包括遺贈と、
財産を特定して送る特定遺贈があります。
与える割合を指定する包括遺贈と、与える財産を指定する特定遺贈と理解してください。
また、遺贈は遺贈者の一方的な意思表示ですが、贈与者・受贈者双方の合意で成立する死因贈与という手段もありますがここでは触れません。
まず包括遺贈から見ていきます。
包括遺贈を受けた者は、権利義務を包括的に承継するので、実質上相続人とほとんど変わらない立場となります。
よって、相続人についての各種の規定、たとえば、
①胎児の相続資格
②相続人の欠格事由
③相続の承認、放棄の期間の制限と放棄のための家庭裁判所への申述
などは、すべて包括遺贈の場合にもそのままあてはまります。
次に、特定遺贈の説明をいたします。
特定遺贈とは、遺贈される財産が特定しているものをいいます。
包括遺贈とは違い、受遺者は相続人と同一の権利義務を持つものではありません。
特定遺贈の場合は、受遺者は遺贈者の死亡後、いつでも自由に遺贈を放棄することができます。
よって、相続人などの利害関係人は、相当な期間を定めて、受遺者に、遺贈を承認するか、放棄するかの催告をすることができます。
もし、その期間内に何の意思表示もないときは、遺贈は承認されたものとみなされます。
そして、胎児の相続資格、相続人の欠格事由などの規定は、包括遺贈の場合と同様、特定遺贈においても適用されます(胎児は受遺者となる資格があり、相続欠格事由に該当する者は受遺者となることができません)。
そして、受遺者が遺贈を受けると同時になんらかの義務を負担する負担付遺贈という仕組みがあります。
たとえば、亡父の遺言により全財産を長男に遺贈するが、母の老後の面倒を見るという負担がついているような場合です。
負担付遺贈は包括遺贈の場合でもありますが、受遺者は遺贈の目的の価額を超えない限度で負担した義務を履行すればよいことになっています。
また、受遺者が遺贈を放棄したときは、遺言者が遺言で特別の意思を表示していなければ、その負担によって利益を受ける者が、自ら受遺者になることができます。
そのほか、遺贈については、次のような点に注意する必要があります。
①被相続人が死亡する前に、受遺者が亡くなった場合には、その遺言は無効となります(民法994条1項)。
つまり、相続人の死亡のときのような代襲相続は生じません。
②また、同様に、※停止条件付の遺贈の場合も、その条件が成就する前に受遺者が死亡すれば無効となります(民法994条2項)。
※停止条件付の遺贈とは、たとえば、「孫が結婚したら自宅不動産を遺贈する」と遺言に記載されていた場合、
当該受益者となる孫が遺言執行時に結婚していなければ、結婚するまでの間、遺言に記載された遺贈は停止するということになります(これを「停止条件」といいます)。
遺言の効果が生じるのは、孫が結婚したときとなります。
今回はここまでにしたいと思います。