任意団体の法人化について

▶任意団体を法人化するメリット

任意団体のままだと…

・権利の主体になれない(登記や銀行口座が団体名でできない)

・代表者の負担増(基本的には契約の面でもお金の面でも代表者の名前で行うことになる)

・権利の引継ぎが大変(死亡時の手続やクラブと対立したときにややこしくなる)

権利の主体になれる(登記や銀行口座を団体名でできる)

代表者の負担減(団体名の契約が可能なので、リスクの分散等につながる)

権利の引継ぎが簡単(所有物や契約主体が団体なので、異動や退職があっても影響が少ない)

このように、

権利関係の明確化、トラブルの予防、円滑な活動の促進、そして何より社会的信用の獲得という部分が異なります。

 

それぞれの特徴

「一般社団法人」

・事業に制限がほとんどない

・登記をすれば設立することができるので、短期間で設立可能

・業務運営について行政庁の監督を受けない

・非営利型一般社団法人の場合、収益事業に関しては課税

・利益を構成員に分配できない

「NPO法人」

・事業に制限がある(不特定多数の者の利益のために活動を行う必要がある)

・行政庁の認証が必要なので設立に5~6か月かかる

・業務運営について行政庁の監督を受ける

・原則非課税で、収益事業に関しては課税

・利益を社員や役員に分配できない

・行政庁への報告義務がある

公益性(不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること)を重視するならば、一般社団法人よりもNPO法人という法人格を選択すべきであると考えます。設立時の行政庁の認証が必要であること、継続して行政庁の監督を受けること等で公益性が担保されるからです。

一般社団法人も公益認定等委員会の公益認定を受けることにより、公益の増進のために活動していく法人である公益社団法人になれますが、公益認定の基準は依然として高いものとなっています。

 

NPO法人と一般社団法人、どちらを設立すればいいのか?

・この2つの法人格に共通すること⇒「非営利」

(「非営利」とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、利益を特定の個人・法人・団体に配分するのではなく、非営利活動に充てなさいという意味)

・異なること

NPO法人…特定非営利活動促進法で事業目的が「不特定かつ多数のものの利益(=公益)の増進に寄与することを目的とする」と定められている

社会課題の解決や社会的使命の達成などの公益がNPO法人の事業目的となる

一般社団法人…事業目的は「公益」でも「共益」でも設立が可能

たとえば、「落語協会」や「日本野菜ソムリエ協会」など、構成員共通の利益(=共益)を事業目的とすることも可能

法人化を考えるうえでは、自分たちの活動が公益なのか、また、共益的活動はどの程度あるのかを把握することが必要

NPO法人、非営利型一般社団法人選択時の重要なポイント

①法人設立目的で考える

NPO法人の場合、20分野の特定非営利活動が主な目的となっている必要があります。

一般社団法人の場合、活動内容に特に制限はありません。

主な目的が20種類の特定非営利活動に当てはまるかどうかが一つのポイントになります。

②社員や役員の人数で考える

NPO法人の場合、社員10名以上、役員3名以上、監事1名以上が必要となります。(役員・監事と社員は兼ねることができます)

この場合の社員とは従業員のことではなく、正会員と呼ばれるもので、NPO活動の趣旨に賛同して、議決権を行使することでNPO法人の運営に参画する人のことを指します。

一方、非営利型一般社団法人は社員2名、理事3名から設立が可能です。

また、どちらも役員の親族規定があります。

③社員資格の得喪で考える

社員資格の得喪(社員になれる者の条件)に関して、NPO法人と一般社団法人とでは大きな違いがあります。NPO法人の目的は公益であるため、この社員の資格に合理的な理由がない限り、不当な条件を設けてなりません。NPO法人では原則として合理的な理由がない限り、その申出(社員になる)を断ることができません。一般社団法人の目的は公益を目的としなくてよい(ただし共益を含む)ため、定款で定めることにより条件を設けることができます。共益が含まれることを前提とすれば同じ資格や同じ条件の者だけが社員となることも可能です。

④設立までの期間で考える

NPO法人の場合、約5~6か月かかります。書類作成も煩雑です。一般社団法人の場合、2~3週間程度です。書類作成もNPO法人に比べれば煩雑ではありません。早く法人を設立し、事業を開始したい場合には一般社団法人の方が適しているといえます。

⑤設立費用で考える

NPO法人の場合、法定費用は不要です。一般社団法人の場合、法定費用として定款認証手数料52,000円、登記時の印紙代60,000円、合計112,000円必要です。

また、当事務所に依頼された場合の報酬(登記手続き費用含む)は、NPO法人の場合、160,000円(税別)、一般社団法人の場合、100,000円(税別)となります。

 

 

NPO法人と一般社団法人のまとめ

1.「事業と市民の参加」の面での比較

「NPO法人」

NPO法人はNPO法にある福祉や環境など20分野の活動を通して「公益の増進に寄与する」ための組織であり、事業目的は公益です。そのため活動についても、収益目的の事業には制約があり、運営においては市民の参加が前提です。

たとえば、「社員総会」で議決権を持つ会員に新規の申し込みがあったとします。最高意思決定機関である総会で議決権を持つということは、運営に参加するということです。NPO法人の場合、この申込みを正当な理由なく断ることができず、基本的には受け入れることになります。また、ボランティアや寄附を受け入れながら運営することも多く「市民の参加のもと、開かれた運営で社会に向けた活動をする」のがNPO法人といえます。

「一般社団法人」

一般社団法人は事業目的が公益と共益のどちらでも設立が可能で、活動分野や内容には制限がありません。また、市民参加型を前提としておらず、議決権を持つ人に条件や制限を付けることができ、たとえば「仲間と運営する」「地元住民だけで活動する」ことも可能です。そのため、共益活動を主目的とする同窓会や、同業者で運営したい専門職団体などではこちらを選択することがあります。

さらに一般社団法人には、最も一般的な非営利型以外のタイプのほかに、非営利型として非営利徹底型と共益型の2つがあります。非営利型になるためには要件がありますが、税制上の取扱いが非営利型以外の一般社団法人に比べて若干優遇されます。

  NPO法人
(特定非営利活動法人)
一般社団法人
非営利型 非営利型以外
非営利徹底型 共益型
根拠法

NPO法
(特定非営利活動促進法)

一般社団法人及び
一般財団法人に関する法律

目的 ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与すること

特に制約なし

事業
  • 特定非営利活動を主たる目的とする(20分野、公益)
  • 上記に支障がない限り「その他の事業」ができる

特に制約なし

社員

(総会で議決権を持つ人)

  • 10人以上(設立後も常に)
  • 資格の得喪に不当な条件を付けない
2人以上
※設立後1名になっても解散しない

 

2.「手続きの違い」での比較

「NPO法人」

NPO法人は「認証」という方法で設立し、登記の費用は掛かりません。具体的には、定款を含む11種類の申請書類を所轄庁に提出後、4カ月以内に認証か不認証かの通知があり、認証されれば登記をして法人が成立します。設立総会も必要のため、仲間とともに立ち上げを進めることになります。あくまで「市民が行う自由な社会貢献活動」をする法人格なので、定款などを見て所轄庁が「この活動は良い・悪い」というように活動の価値判断をするわけではありません。しかし、申請内容が法令に反していないことが必要です。

「一般社団法人」

一般社団法人は「準則」という方法で設立します。具体的には、団体のルールブックである定款の作成、公証人の認証、登記といった3つの段階を経て成立します。

  NPO法人 一般社団法人
所轄庁 都道府県・政令市 なし
設立方法 認証 準則
設立期間 5~6か月 2~3週間
法定費用 0円 112,000円
情報公開 あり 特にはなし
行政庁の監督 緩やかにあり ほぼなし

 

任意団体の

NPO法人化             一般社団法人化

書類作成               定款作成

⇩                  ⇩

設立総会              【公証人】認証

⇩                  ⇩

書類作成               登記

申請
【所轄庁】(4か月以内)
・公告
・縦覧
・審査

⇩       ⇩

認証通知    不認証通知

登記

登記完了届

つまり、一般社団法人は短期間かつ簡便な手続きで設立できるのに対し、NPO法人は、設立までに時間と労力を要するといえます。そのため、法人化までの期間で一般社団法人を選ぶ場合や市民参加や民主的な運営であることを明確にするためにNPO法人を選択することもあります。

 

3.設立後の比較

設立後は法令や定款に則った適切な運営が求められます。NPO法人は、毎年、貸借対照表の公告や所轄庁への報告書類提出などのほか情報公開の義務があります。また、所轄庁の緩やかな監督も受けます。一般社団法人には所轄庁がなく、情報公開の義務も関係者への閲覧程度で、ほぼありません。すなわちNPO法人は設立後に多くの事務が発生しますが、それにより公益性を担保し、かつ市民に開かれた運営を実現できます。なお、両法人とも税務や労務と無関係ではなく適切な対応が必要です。

 

4.認定NPO法人と公益社団法人

NPO法人と一般社団法人の「その先」についてです。

NPO法人は、設立後2事業年度を終了して、受入寄附や組織運営などの条件を満たすと「認定NPO法人」の申請ができるようになります。認定NPO法人制度は、幅広い市民から支持・支援を受けているNPO法人を認定し、税制優遇を与えることで、その活動を支援するというものです。2001年にスタートした制度ですが、申請作業の大変さや要件の厳しさなどから、認定数はNPO法人全体の1%以下にとどまっていました。しかし、2012年にNPO法が改正され、認定制度にも大きな変更がありました。これにより「認定」が身近になり、目指す団体も増えています。

また、一般社団法人も公益認定を受けることで「公益社団法人」になることができ、さまざまな税制優遇が受けられるようになりますが、これには行政による監督や組織構成などへの制限も生じます。

法人格を検討するときは、「その先」を視野に入れた組織づくりをすることも方法のひとつです。

 

最後に…

法人化を検討する際に気を付けておくべきポイント

 

運営面から考えると…

NPO法人や一般社団法人となることで「非営利性」をアピールすることができます。

NPO法人はそれに「公益性」が加わり、社会に運営や会計の情報を公開することで「透明性」を保ちやすくなります。また、所轄庁により情報公開がされることで市民に知ってもらう機会が増えることも予想され、結果として信頼につながることもあります。

一般社団法人は、運営や会計の情報公開義務がないため自主的な努力が必要になります。

 

また、NPO法人は「市民性」が高く、開かれた組織で運営されます。対等な関係の参加を促すことで、特定のメンバーによる運営ではないことを強調できるため、住民主体の民主的な運営を目指す場合には選択しやすい法人格と言えます。

 

一方で、意思決定のスピードについては、NPO法人の場合(定款によりますが)、「みんなで決める」ことを重視しています。スピードを重視するならば、任意団体や一般社団法人の方がスムーズとも言えます。

 

財政面から考えると…

NPO法人、一般社団法人のどちらも、法人化により財産は代表個人の手元から離れますので、管理や引き継ぎがしやすくなります。

また、「助成金を得るため」法人化を検討されるケースも多いようです。助成金は、公益法人や企業関係、市民団体など、多様な助成団体により年間を通して提供されています。任意団体や一般社団法人は、外から見て活動の公益性が判断しにくいため、対象外としている助成金も若干はありますが、多くの場合、助成金対象条件に「法人であること」は含まれていません。むしろ活動実績やその非営利性・公益性が重視されています。

また、法人化することで市民や企業からの寄付を増やしたいとお考えの方もおられると思いますが、あくまで寄付は団体や活動に対する共感や賛同を基に集まるお金です。組織のカタチや法人格の種類ではなく、活動や参加の仕組みを工夫することが大切です。

寄付を意識した法人のカタチに認定NPO法人があります。NPO法人設立時から「認定」を目指して組織づくりをする団体もあります。

 

事業面から考えると…

指定管理や事業委託など、行政との契約・取引を増やしたいといった、事業の契約先との関係から法人化を検討することもあります。なかには、契約できる法人格を限定し、一般社団法人は除外している自治体もあります。

行政との契約においては、NPO法人も注意が必要です。行政関連の事業では、活動の対象者を「○○の条件を満たす人」や「運営にかかわるメンバーは○○町民のみ」などと限定している場合があります。事業に一定の制約があるNPO法人は「社員」希望者を不当な条件で断ることができません。最初は住民ののみで構成されていても、将来的に○○町民でない「社員」の方が多くなる可能性もあるので、そういった注意も必要です。

また、法人化することで福祉事業やコミュニティビジネスなど活動の幅を広げたいといった場合は、一般社団法人は制約を受けずに多様な活動をすることができるので適しているといえます。

 

どんな協会になりたいのかを念頭において、組織のビジョンやみなさんの夢を実現するためのツールとして法人化を検討する

法人化することにより、さらなる地域貢献や市民との協働が期待できます。

一方で、法人化に伴う実務に追われ活動に手が回らないという話もよく耳にします。従来のやり方を大幅に変えることは団体の負担にもなります。「何のための法人化か」を団体内でよく話し合い、できる限り現在の体制や方法に沿ったものを選択することをお勧めいたします。特にNPO法人を選択した場合は、地域スポーツクラブであると同時に、市民活動団体としての側面も持つことになります。意識的に参加の仕組みをつくり、幅広い市民とともに活動していくための取り組みが必要になります。