今回の相続教室は、相続にも関係してくる、「特別養子縁組制度」についてのニュースについてお伝えしたいと思います。
「特別養子縁組制度」とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。
「特別養子縁組」は、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、下記の要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立します。
「特別養子縁組」の成立には、以下のような要件を満たした上で、父母による養子となるお子さんの監護が著しく困難又は不適当であること等の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると家庭裁判所に認められる必要があります。
(1)実親の同意
養子となるお子さんの父母(実父母)の同意がなければなりません。ただし、実父母がその意思を表示できない場合又は、実父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となるお子さんの利益を著しく害する事由がある場合は、実父母の同意が不要となることがあります。
(2)養親の年齢
養親となるには配偶者のいる方(夫婦)でなければならず、夫婦共同で縁組をすることになります。また、養親となる方は25歳以上でなければなりません。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。
(3)養子の年齢
養子になるお子さんの年齢は、養親となる方が家庭裁判所に審判を請求するときに6歳未満である必要があります。ただし、お子さんが6歳に達する前から養親となる方に監護されていた場合には、お子さんが8歳に達する前までは、審判を請求することができます。
(4)半年間の監護
縁組成立のためには、養親となる方が養子となるお子さんを6ヵ月以上監護していることが必要です。そのため、縁組成立前にお子さんと一緒に暮らしていただき、その監護状況等を考慮して、家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定することになります。
平成31年1月30日読売新聞より
法制審議会(法相の諮問機関)の部会は平成31年1月29日、特別養子縁組制度に関する法改正の要綱案を決定した。「原則6歳未満」とされる対象年齢を、「原則15歳未満」に引き上げることが柱だ。政府はこの内容を盛り込んだ民法などの改正案を今国会に提出する方針で、成立すれば1988年の制度開始以来、初の見直しとなる。要綱案を決めたのは特別養子制度部会。2月の法制審の総会で正式決定後、山下法相に答申され、政府は3月にも法案を国会に提出する方針だ。
特別養子縁組は、児童虐待や経済的事情などで実親と暮らせない子どもと、血縁のない夫婦が親子となる制度。普通養子縁組や里親と異なり、実親との関係は終了し、戸籍上も養父母の実子と同じ扱いになる。
法制審の決定は、特別養子縁組の対象を拡大し、6~14歳でも可能にすることを意味する。法制審の同部会が昨年まとめた中間試案では、「15歳未満」のほか「13歳未満」「8歳未満」など他の案も示された。15歳になると普通養子縁組を本人同意の上で結べるようになることなどから、同部会は「15歳未満」が適当と判断した。
要綱案は、15~17歳も一定の条件を満たせば特別養子縁組の対象にするとした。①本人の同意がある②15歳になる前から養父母となる人に養育されている③15歳までに縁組を申し立てられなかった――の三つをすべて満たす必要がある。
子供の保護や縁組に深く関わる児童相談所の所長が、養父母に代わって家庭裁判所に縁組を申し立てる制度の新設も明記された。現行制度では、養父母が家裁に縁組を申し立てる必要があり、実親の養育状況が不適当だと立証しなければならないなど、負担が大きかった。
また、実親が縁組に同意した場合、2週間経過すると同意を撤回できなくする。現行では、家裁で正式に縁組が決まるまで、実親はいつでも同意を撤回できるため、混乱の原因になることがあった。▶特別養子縁組は、両親から虐待を受けるなど家庭環境に恵まれない子供たちを社会全体で救う制度のひとつだ。対象年齢を引き上げる意義は大きい。
日本国内で保護を必要とする子どもは約4万4000人(厚生労働省調べ。2018年)いる。児童相談所が保護し、その後、児童養護施設や里親に預けられたり、養子になったりする。ただ、特別養子縁組の成立は年500~600件程度と低調だ。実親の同意が得られなかったり、「原則6歳未満」とする対象年齢を超えたりして、縁組を断念するケースも多いという。
特別養子縁組の支援を行う認定NPO法人「環(わ)の会」の星野寛美代代表理事は、法制審の要綱案について「対象年齢の引き上げを歓迎する。児童相談所の所長が縁組を申し立てられるようになれば、養父母の負担も軽減される」と期待感を語った。
だが、ある程度の年齢になった子供の場合、養父母との人間関係構築が難しいケースも考えられる。制度見直しに伴い、養父母の支援や負担軽減策も課題となりそうだ。(政治部 伊賀孝太)