第36回 信託

こんにちは!

今回は「信託」ということについて見ていきたいと思います。

 

信託とは、財産管理を他人に委ねる方法のひとつです。

他人に財産管理を委ねる方法として「委任」制度もありますが、委任と違うのは、財産の管理の権限だけでなく、財産の名義まで他人に移すというところです。

 

もう一つの違いは、委任が本人と受任者の二者の関係であるのに対して、信託は委託者と受託者と受益者の三者の関係であることです。

元々の財産を持っている人を委託者

その委託者から頼まれて財産の名義や管理権・処分権を移される人を受託者

受託者が財産の管理や処分をすることで実質的に利益(これを「信託受益権」といいます)を受ける人を受益者

(受託者を監督する人である信託監督人を選任することもできます)

といいます。

 

自分の亡き後の財産をどうするかについては、遺言をしてそれぞれの財産の取得者を決めるという方法の他に、

受託者に信託をして受益者が利益を受け取れるようにするという方法もあり、そのような方法を信託というわけです。

 

遺言と信託を比較した場合、財産を移すという面では同じですが、

遺言が遺言者の死後に、自分の財産の名義・管理・処分の権限を相続人や受遺者に移すのに対し、

信託は生前から財産の名義などを受託者に移すところが異なります。

 

 

そして、間違えやすいのが、「遺言信託」と「遺言による信託」です。

信託銀行では、近年「遺言信託」という名称で遺言に関する業務を行い顧客を勧誘していますが、この「遺言信託」はほとんどの場合、法律上の「信託」ではありません。

遺言書の作成の指導と、作成した遺言の保管、そして遺言の執行を行う等内容のものだからです。

 

これに対して①「遺言による信託」は、文字どおりの信託です。

遺言の中で、委託者である遺言者が、その財産の全部または一部を受託者に信託譲渡し、相続人などの受益者に利益を帰属させるのです。

遺言書において、信託を設定することを「遺言信託」といいます。

具体的には、

子が知的障害などで自立して生活していくことが難しい場合、子に遺す財産をどう管理していくかが問題となります。

そこで、親が亡くなったあとの子供の生活のために、子の成年後見人や未成年後見人を受託者、子を受益者とし、定期的に金銭の給付を行えるよう遺言により信託を設定する

等で利用されます。

 

これに対して、②「遺言代用信託」といわれるものがあります。

遺言代用信託は、生前信託ともいわれるもので、生前に受託者を決め、受託者との間で信託契約を締結して、委託者が死亡するまでは委託者自身を受益者として、その財産からの収入を得るようにします。

そして、あらかじめの信託契約の定めにより、委託者の死亡と同時に受益者を妻などに定めることによって、信託受益権を引き継がせることができるのです。

まさに遺言に代わる信託といえます。

 

「遺言代用信託」も「遺言による信託」と同様、

財産管理が困難な高齢配偶者の生活・扶養・介護・療養等の費用の支払い及び収支の管理を誰がどのように担うかという不安(配偶者(伴侶)亡き後問題)や

障がいのある子の生活・扶養・教育・医療・介護・療養等に係る費用の支払い及び収支の管理を誰がどのように担うかという不安(親亡き後問題」)

を解消する手段となるものです。

 

「遺言による信託は委託者の死亡時に効力が発生するのに対し、「遺言代用信託」は信託契約締結の時より効力が発生します

 

 

 

次に、③「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」を説明します。

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託とは、

たとえばAがその財産を信託し、受益者をBと指定するが、

Bが死亡した場合にはその受益権はBの相続人ではなく、あらかじめAが指定していたCが新たに受益権を取得し、

さらにCの死後はDが新たに受益権を取得する

というように、連続して受益者を何代にもわたって指定しておくものです。

 

もっとも、受託者の死後あまりに長期にわたって信託財産の受益者を委託者の意思で確定させるのはどうかという疑問もあったため、

信託法では信託設定から30年経過後に受託権を取得した受益者が死亡するまで、またはその受益権が消滅するまでの間に限定して、信託を有効としました。

 

 

この「信託」は、遺言や財産管理の委任契約・任意後見契約、成年後見制度などの財産管理手法の欠点を補うことのできる制度として注目を集めています。

 

今回はここまでにしたいと思います。