第35回 相続財産と遺留分②

こんにちは!

今回も前回に引き続き、遺留分ということについて見ていきたいと思います。

 

まず、遺留分減殺請求権の行使について知っておきたい内容から見ていきます。

 

遺留分を算定するための基礎となる財産ですが、民法では次のように定められています。

遺留分算定の基礎となる財産=相続開始時の財産+贈与財産-債務

ここで注意しなければならないのは、民法では、これに含められる贈与財産の範囲は次のように定められています。

①遺贈(遺言によって特定の人に財産を与えることをいい、遺贈は遺贈者が一方的に行う意思表示

②死因贈与(「私が死んだら○○にこの家を与えます」というように、死亡を条件として生前に交わした贈与契約をいい、死因贈与は贈与者と受贈者の合意で成立する契約

③相続開始前1年以内にした贈与(生前贈与)

④1年以前であっても当事者双方が遺留分権利者を害することを知ってした贈与(生前贈与)

⑤当事者双方が遺留分権利者を害することを知りながら不相当な対価をもってした有償行為

⑥相続人が被相続人から、婚姻、養子縁組、生計の資本として受けた贈与(生前贈与)(これには上記③④⑤と異なって、期間の限定や、悪意という要件がありません)

 

そして財産評価の基準時は、相続分算定の場合と同じになります。

ただし、条件付きの権利または存続期間が不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価にしたがうことになります。

 

 

次に、遺留分減殺請求権を行使するにはどうすればいいのかということについて見ていきます。

減殺請求をすることができるのは、遺留分を持つ相続人と、その承継人です。

請求の相手方は、贈与または遺贈を受けた者になります。

行使の方法は、遺留分権利者が、遺留分の限度内で、贈与や遺贈の効力を否認する旨を相手方に意思表示すれば、そこで効力が生じます(通常は証拠を残すため内容証明郵便で行います)。

 

 

そして減殺はどのような順序でするのかということですが、まず、①遺贈を先にします。次に②死因贈与⇒③生前贈与ですが新しいものから順次、古いものにさかのぼります

たとえば、次の事例で考えてみます。

・相続人は妻のみ
・被相続人は平成30年3月に死亡。
・相続財産は1,000万円で、この1,000万円を第三者Aに遺贈するという遺言
・被相続人は平成30年2月に第三者Bに2,000万円を生前贈与した
・被相続人は平成30年1月に第三者Cに3,000万円を生前贈与した

上記の事例について、まず、遺留分を侵害した額を計算します。

遺留分の算定の基礎となるのは、遺贈1,000万円+第三者Bへの生前贈与2,000万円+第三者Cへの生前贈与3,000万円=6,000万円です。

そして、妻の遺留分額は、6,000万円✕1/2(法定相続分)✕1/2(遺留分割合)=1,500万円であり、遺留分侵害額も1,500万円になります。

このとき、妻がこの1,500万円を確保するために誰への遺贈や生前贈与を減殺することができるかについては、次のとおりとなります。

この場合、①遺贈と生前贈与があるので、まず第三者Aへの1,000万円の遺贈が減殺され、第三者Aは遺贈を受け取るこはできません。

次に、②生前贈与が減殺されますが、生前贈与のうち、相続開始時に近いBへの生前贈与が減殺されます。

Bへの生前贈与2,000万円のうち500万円が減殺され、第三者Bは500万円を妻に返還る必要があります。

一方、Bへの減殺により、妻の遺留分は確保されたので、第三者Cへの生前贈与3,000万円については、減殺されません。

そして減殺はいつまでにしなければならないかというと、遺留分権利者が、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈のあったことを知った時から1年以内にこれを行使しないと、時効によって消滅します。

また、知らなくても、相続開始の時から10年が経過した場合には講師ができなくなります。

 

 

次に、遺留分を放棄するにはということについて見ていきます。

相続人は被相続人が存命中は、相続権の放棄をすることができません。

しかし、遺留分の場合は、相続開始前でも、あらかじめ家庭裁判所の許可を得て、これを放棄することができます(民法1043条)。

ただし、遺留分を放棄しても相続権がなくなるわけではないので、遺留分放棄者以外の他の共同相続人だけに遺産を相続させるためには、その旨を遺言で定めておかなければなりません。

また、遺留分を持っている共同相続人のうちの誰かがこれを放棄しても、他の共同相続人の遺留分の額がこれによって増加することはありません。

 

これを具体例で説明します。

たとえば、推定相続人が兄弟2人とします。

父親は、全ての財産を長男に相続させたいと思っています。

そこで、「すべての財産を長男に相続させる」という遺言書を書く事にしました。

しかし、弟には法律で保障されている「遺留分」があります。

そのため、弟がこの遺言書に納得しない場合、遺留分減殺請求権を行使すれば、法定相続分である1/2の1/2、つまり1/4については遺留分となるため、長男は財産のうち1/4を次男に渡さなければならなくなってしまいます。

父親の生前に次男に対し、「お前には生前に1000万円を贈与するから、そのかわりに遺留分は放棄して欲しい」という一定のメリットを次男に提示し、次男自らが納得したうえで遺留分の放棄の手続をとりました。

こうして、「すべての財産を長男に相続させる」という遺言書の内容が確実に実現できる状態になりました。

このように、遺留分権利者に予め生前贈与などのメリットを提示して遺留分を放棄してもらうことで、相続発生後の遺留分による争い事を未然に防止することができることになります

 

 

次に、遺留分を侵害する遺言の効力ということについて見ていきます。

遺留分を侵害する遺言であっても、遺言としては有効です。

遺留分権利者が遺留分減殺請求を所定の期間内に行わなければ、争いになることはありません。

しかし、遺留分減殺請求がなされたときは変更される運命にあるわけですから、

遺言をするにあたっては、できるだけ遺留分を侵害しないように配慮することが無用の紛争を避けるためには必要です。

 

今回はここまでにしたいと思います。