第31回 遺言③(普通方式の遺言)

こんにちは!

今回は、普通方式の遺言について詳しく見ていきたいと思います。

前回見たとおり、普通方式の遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の三種類があります。

 

①自筆証書遺言

遺言者が、遺言書の全文、日付、氏名を自書して印を押したものです。

自書が要件ですから、パソコンで作成したものや、音声を録音したものなどは自筆証書遺言とは認められません。

本文だけ自書で、財産の中身はパソコンで作成してしまうというのもダメです。

また、日付も何年何月何日と明確に特定できることが必要で、7月吉日などという記載は無効です。

自筆証書遺言に加除、変更するときは、遺言者がその場所を示して、変更した旨を附記してこれに署名し、変更の場所に印を押さなければ効力がありません。

自筆証書遺言は一番簡単に作成できるものですが、方式にしたがっていない場合でもそれを点検する人がいないので、

①無効なものを作成してしまうおそれがあること

②特定の相続人によって隠匿されたり破棄される危険があること

③遺言の内容が簡単に実現される形になっていない場合や、極端な例では意味不明な場合があること

④遺言能力や偽造を疑われやすいこと

などの問題点をかかえています。

もちろん、遺言書を勝手に破棄した相続人は相続欠格者となるわけですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、確かにその内容の遺言が存在したということを立証することが難しいので、破棄されてしまえば事実上うやむやになってしまい、遺言者の意思はまったく無視される結果となります。

そこで保管については、できるだけ銀行の貸金庫に保管するとか、遺言で指定した遺言執行者などに頼むのが良いと思われます。

そして自筆証書遺言の場合は、遺言者が亡くなったあと、遺言を発見した者は、家庭裁判所の検認(家庭裁判所が遺言書の存在および内容を確認するために調査する手続)を受けなければなりません。

 

②公正証書遺言

公正証書によって遺言を作成するやり方で、二人以上の立会い人の下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを読み聞かせて確認のうえ、遺言書を作成します。

これが、最も間違いのない確実な遺言の方法です。

なお、遺言者が口がきけない場合や耳が聞こえない場合も公正証書を作成することができます(民法969条の2)。

公証人は公正証書遺言の原本と正本、及び請求があれば謄本を作成し、原本は公証人役場に保管されますので、遺言の偽造や破棄、隠匿などの問題は起こりません。

また、公証人は裁判官や検察官のOBなど法律のプロですから、方式間違いも生じませんし、内容面もチェックします。

なお、遺言者が死亡した後の家庭裁判所による検認の手続は不要です。

もし、遺言者が病気などのため、公証人役場に出向くことができない場合は、公証人に自宅や病院に出張してもらって作成することもできます。

ちなみに、現実的な作成の手順としては、先ず行政書士等専門家にどのような遺言を作りたいか希望を伝えます。

そこで、行政書士はできるだけ遺言者の意思を反映させるとともに、将来的に紛争が起こりにくい遺言の原案を作ってから、公証人に連絡をとり作成の日時を決めます。

そして、遺言者と証人二人(通常はその行政書士と事務職員)が公証人役場へ行き、公正証書遺言を作成してもらうというのが一般的です。

遺言書作成に立ち会う証人には次のような制限があります。

この制限は、公正証書遺言以外の場合でも同じです。

証人になれない者(民法974条)

①未成年者

②推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族

③公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

 

③秘密証書遺言

遺言の内容を死ぬまで伏せておきたいときには、秘密証書遺言という方法もあります。

①遺言者が遺言書を作成し(パソコンで作成することや、他の人に代筆してもらうことも可能なので、文字を書くことが難しい方でも作成することができます。ただし、遺言書と封筒に署名(と押印)だけはする必要があります)、

②証書に署名(自書)して印を押し

③遺言者が証書を封じ

④証書に押した印で封印し

⑤公証人と二人の承認の前に証書を提出して

⑥自分の遺言書であることを遺言者の氏名、住所を申述します

⑦公証人は証書提出の日付及び遺言者の申述を封紙に記載し

⑧遺言者と証人とともに署名、捺印することによって完成します

かなり複雑な方法にもかかわらず、公証人は遺言書の内容にはタッチしませんから、方式違反や内容面での間違いをしてしまっていることもあるし、遺言書の保管の点で問題があるのは自筆証書遺言と同じです。

また、遺言書の検認手続きも必要です。

 

今回はここまでにしたいと思います。