第28回 相続の放棄、限定承認②

こんにちは!

今回は、まず限定承認ということについて見ていきたいと思います。

 

限定承認とは、相続財産の中に、資産より負債の方が多いおそれのあるときに、相続はするけれども、引き継いだ資産の範囲内でしか負債の責任は負わないという方法です。

 

通常の相続(単純承認)は、プラスもマイナスも全部引き継ぐ

それに対して前回見た「相続放棄」は、プラスもマイナスも一切引き継がない

そして今回の「限定承認」は、プラスの分だけマイナスを引き継ぐ

とお考え下さい。

 

例えば、相続財産が1,000万円で、相続債務が1,200万円の場合、限定承認を行うと相続人は、相続債務のうち1,000万円についてのみ返済義務を生じますが、残りの200万円については債権者に請求されたとしても支払う必要がなくなります。

 

これも相続放棄と同じように、3ヶ月以内に(相続放棄と同様に延長の申出は可能)、相続人全員で家庭裁判所に申述しなければなりません(これは相続放棄と異なります)。

限定承認をするためには、申述書とともに、相続財産目録(負債を含む)を家庭裁判所に提出しなくてはいけません。

 

このように限定承認は、相続人全員でしなければならず、また申述後の手続きが複雑なため(清算手続があってやや面倒)

一見お得な相続方法といえますが、実際には、限定承認はほとんど利用されていません。

また、利用するにしても慎重に検討しなければならないでしょう。

 

 

次に、相続放棄や限定承認が認められない場合について見ていきます。

相続人が3ヶ月以内に相続放棄や限定承認の手続を取らなかったときは、相続する態度を表明した(単純承認)とみなされます。

①はっきりと相続を承認した

②3ヶ月の期間内であっても相続人が相続財産の全部または一部を処分したり、あるいは隠匿したり、※1悪意で財産目録中に記載しなかった

などのときは単純承認したとみなされてしまい、相続放棄や限定承認の効果を主張することはできなくなってしまいますので、十分な注意が必要です。

※1悪意・・・法律関係の発生・消滅・効力に影響するような、ある事実を知っていること

 

過去の裁判例においても、相続人が相続放棄をして相続財産についての処分権限がなくなったにもかかわらず、被相続人の有していた不動産を相続登記したうえ、第三者に売却した場合において、裁判所は、この場合を単純承認したとみなして、相続放棄の効力を否定しています(東京地裁H.23.10.31)。

 

 

そして次に、間違いやすい「相続放棄」と、遺産分割協議における「相続分の放棄」の違いについて見ていきたいと思います。

「相続放棄」というと、遺産分割協議において相続財産を受け取らないこと(つまり「相続分の放棄」)と理解している人が多いのですが、この二つはまったく性質が異なります。

「相続放棄」はすでに述べたように、相続開始後3カ月以内に家庭裁判所に申述するという厳格な要件が必要で、主として被相続人の残した借金を免れるために行われます。

遺産分割協議における「相続分の放棄」は、遺産分割に際して、私は相続分を主張しない、何もいらないので他の人に譲ります、ということを意味するのであって、相続債務を放棄したことにはなりません

「相続分の放棄」をしたことを「相続放棄」したと勘違いして、自分は「相続分の放棄」をしたから借金は引き継がないと思っていたのに、債権者から請求されたという事例もあります。

そのような心配があるときは、必ず家庭裁判所に相続放棄の手続をするようにしてください。

今回はここまでにしたいと思います。