第27回 相続の放棄、限定承認①

こんにちは!

今回は、相続の放棄、限定承認の内容と、いつまでに、どのような方法でしなければならないかということについて見ていきたいと思います。

 

被相続人が死亡すると、その時点で相続人の意思に関係なく相続が発生し、被相続人が有していた債権・債務はすべて相続人に引き継がれることになります。

 

しかし、債務の方が多いという場合などは、相続人は承継したくないと思うかもしれません。

このような、相続人の意思をある程度尊重するための制度として、相続放棄・限定承認があります。

 

それではまず、相続放棄について見ていきたいと思います。

相続放棄とは、一切の遺産相続をせずにすべてを放棄してしまうことをいいます。

被相続人(亡くなった人)は資産だけではなく、借金を残して死亡するケースもあります。

もし相続財産の中から借金を支払えない場合には、相続人が自分の財産から被相続人の借金を支払わないといけません。

そこで、このように借金を支払いたくない場合において、相続放棄を利用します。

 

相続人が、※自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしたときは、はじめから相続人にならなかったものとして扱われます。

相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになるので、借金も相続せず、その支払をしなくても良くなるのです。

この3ヶ月という期間は、相続人が海外旅行中であるとか、財産調査に日数がかかるというような事情がある場合には、家庭裁判所に申し出て、延長してもらうことができます。

 

 

それでは、遺産の中に借金があるのに、相続放棄をせずに放置していたらどのような問題があるのでしょうか?

この場合、まずは債権者から借金の支払督促が来ます。

電話や郵便などで督促が来るので、まるで自分が借金苦であるかのような扱いを受けてしまうのです。

支払をせずに放っておくと、債権者から裁判を起こされてしまいます。

そして、裁判所が判決を出したら、債権者は、相続人の遺産に対して強制執行(=差押)をしてきます。

このとき、差押えの対象になるのは、被相続人の遺産だけではなく、相続人自身の資産も含まれます。

もし相続人に自分の家がある場合、債権者はその家を競売にかけて債権回収することもできるのです。

借金を相続すると、その借金は「被相続人の借金」ではなく「相続人自身の借金」になってしまうからです。

相続放棄をすれば、被相続人の資産を相続することもなければ、借金を相続して引き継ぐこともありません。

このように「相続放棄」や次回説明する「限定承認」は、相続人が被相続人の債権者に対抗(主張)するための方法なのです。

 

注意しなければならないのは、相続人間の話し合いの中で「私は相続を放棄する!」と宣言しても、それは遺産はいらないと言ったにすぎず、法律的には「相続放棄」の効力は生じませんので気を付けてください。

 

そして相続放棄には3ヶ月の期間がありますが、一回手続きをしたら、たとえその3ヶ月の期限内であっても取消ができません

たとえば、借金があるとわかって相続放棄したけれども、後で気が変わったから取り消すことはできないので、注意が必要です。

ただし、民法第919条2項では、相続放棄の取消ができる可能性があることを定めています。

たとえば、

①詐欺や強迫行為によって無理に相続放棄させられた場合(民法96条)

②未成年者が単独で(法定代理人の同意なしに)相続放棄した場合(民法5条)

③成年被後見人が自分一人で相続放棄をした場合(民法9条)

には、取消が認められます。

これに対し、単に「後から財産があるとわかった」だけでは取消はできないので注意が必要です。

 

 

なお、相続放棄は、相続開始に行わなければ無効です。

被相続人の存命中に、相続人が自己の相続分を放棄することを約束していても、放棄の効力は生じません。

(後に説明する「遺留分の事前放棄」は一定の要件のもとにできます。)

 

 

 

※「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」についての最高裁判例(S.59.4.27)

この事案における被相続人(父)は、生前、定職につかず家庭を顧みなかったため、妻子が家を出て、その後は、被相続人と子らとの交流は途絶えていた。

被相続人(父)は生活保護で単身暮らしていたが、別居10年目に、他人の借入の連帯保証人となった。

債権者が、被相続人(父)相手に連帯保証債務履行請求訴訟を提起したところ、訴訟手続中に被相続人(父)が死亡した。

子らは父の死亡自体はすぐに知ったものの、父にはまとまった資産は何もなく、まして連帯保証人として債務を負担しているとは全く知らなかったために、3ヶ月以内に放棄の手続を取っていなかった。

ところがその後、裁判所からの連帯保証債務履行請求訴訟の受継申立書等が送られてきたことにより父に借金があることを知り、びっくりして相続放棄の申述をした。

債権者は、被相続人の死亡から約1年後に当該連帯保証債務の存在を知った子らが行った相続放棄は、民法915条1項の熟慮期間(3か月)が徒過した後になされたものであるから無効であると主張した・・・。

このケースにおいて最高裁判決は、

「相続人が相続放棄を3ヶ月以内にしなかったのは、相続財産がまったく存在しないと信じたためであって、かつこのように信ずるについて相当な理由がある場合は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時、または通常認識し得べかりし時から、3か月の期間を起算するのが相当である」

として、遅れて相続放棄した者を救済しています。

 

 

今回はここまでにしたいと思います。