第22回 個別財産の持分の譲渡/遺産分割で決められた債務の不履行・解除の可否

こんにちは!

今回はまず、個別財産の持分の譲渡はすることができるのか、ということから見ていきます。

相続人の一人が、遺産分割前に、特定の不動産などの個別財産の自己の持分を譲渡することは可能です。

ただし、自己の(全体についての)相続分を譲渡した場合と異なり、

共同相続人の一人が、遺産中の特定不動産の自己の持分を第三者に譲り渡した場合は、他の相続人は譲受人から取戻すことができないと解されています(最高裁S.53.7.13)。

 

特定不動産を譲り受けた第三者は、その財産について他の相続人と共有することになり、

その財産を分配または換価しようとするときは、遺産分割手続ではなく、共有分割の手続をとるべきとされています(最高裁S.50.11.7)。

これは、共有者の話し合いで解決することができない場合は、裁判所に遺産分割審判を求めるのではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟によらなければならないということです。

 

 

次に、遺産分割で決められた債務の不履行と解除の可否について見ていきます。

 

たとえば、代償分割の方法で、長男が土地・建物をすべて取得し、そのかわり数年間にわたって代償金を支払うとする遺産分割協議がまとまって、不動産を長男名義賭したとします。

この場合は、長男は弟二人に代償金を支払うという債務を負担していることになります。

しかし長男が、代償金支払いの約束を果たさなかった場合、弟二人は長男の債務不履行を理由に、遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか?

 

また、年老いた親の面倒をみるということで、大半の財産の分配を受けた者が面倒をみないというような場合なども、同様の問題が発生します。

 

このような場合は、一方の債務が履行されなくても、遺産分割協議を解除することはできないとされています(最高裁H.元.2.9)。

このように考えないと、「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」とする民法909条により遡及効を有する財産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しる害される結果となってしまうからです。

 

代償分割の場合には、債務が不履行になる場合も想定して、遺産分割協議を行う必要があります。

具体的には、一括払いでもらうこと、できるだけ担保をつけること等が考えられます。

 

なお、当事者全員が合意した場合は、遺産分割のやり直しはもちろんできます。

 

ただし税務上、遺産分割のやり直しは、遺産分割とはみなされず、譲渡・交換・贈与として課税を受けます。

特に贈与税は税率が高く、農地の価格によっては多額の税金がかかってしまうおそがあるので、税理士とよく相談してください。

今回はここまでにしたいと思います。