今回は、外国の技能実習送り出し機関とパイプがあり、地域の中小企業と一緒に組合をつくって技能実習生を受け入れたいと考えている場合、どのような手続きを行わなければならないのかご説明いたします。

 外国人技能実習生を受け入れるためには、「企業単独型」と「団体監理型」の2つがあります。
「企業単独型」とは、海外にある合弁企業等、事実上の関係を有する企業の社員を受け入れるものであり、
「団体監理型」とは、商工会等の営利を目的としない(非営利)団体の責任・監理の下で受け入れを行うものです。
(監理団体となれる団体は、法律で以下の通り決まっています。)
 1.事業協同組合(中小企業団体)
 2.商工会議所、商工会
 3.農業協同組合、漁業協同組合
 4.公益社団法人、公益財団法人
 5.職業訓練法人
 6.法務大臣が告示をもって定める監理団体

 「団体監理型」で外国人技能実習生を受け入れる場合、現実的であるのは事業協同組合の設立です。

 以下、事業協同組合を設立し、監理団体許可を受け、技能実習生を受け入れるまでの流れをご説明いたします。

1.事業協同組合の設立認可
 事業協同組合とは、会社等が4社以上集まり、取引などの競争力を高め、互いの利益のために共同事業を行う非営利法人をいいます。
 非営利団体でなければ、技能実習生を受け入れるために必要な監理団体許可は受けることができないのです。
 共同事業の内容としては、例えばガソリンの共同購入を行ったり、文房具・工作機械の共同購入、それぞれの従業員に対する教育・セミナーや福利厚生等自由に設定することができ、その種類も多岐に及びます。
 技能実習はこの共同事業の一つとして、「外国人技能実習生の受け入れ事業」といった形で行われます。
 事業協同組合設立のためには、およそ6か月の所要期間が必要です。

2.監理団体許可
 事業協同組合の登記が完了したら、次に監理団体許可を取る必要があります。
 監理団体とは、外国人技能実習生を受け入れる際、実習先(実習実施者)において適性に実習が行われているか監理する団体のことであり、事業協同組合がこの許可を得て監理団体となります。
 監理団体の許可を受けるための要件が定められており、それらを満たしている必要があります。

 過去において事業協同組合は、監理事業は収入と支出が一致していなければならないので、まず本来事業を稼働させ十分余裕を持ってから監理団体の許可を受けることになっていました。これまでは、事業協同組合が技能実習事業を行うためには、組合の本来事業(共同経済事業)である、「共同販売」「共同購買」などを一定期間(1年間)行ってからでないとできないとされていたのです。

 現在において技能実習法令上は、組合としての本来事業の一定の稼働実績を求めることはなく、前記取扱いは廃止されたと承知しています。
 したがって新設後間もない団体にあっては、直近2事業年度の決算資料・確定申告書・納税証明書に代えて、設立時の貸借対照表・事業計画書・予算書を提出すれば監理団体許可申請ができることになります。

 事業協同組合を管轄している各省庁が新規組合の設立に当たり、定款目的に「外国人技能実習生受入事業」を最初から許可しない場合は、現在でも1年間組合の本体事業を行い、管轄省庁に事業報告を行ってから「外国人技能実習生受入事業」目的追加の定款変更認可申請を行い、監理団体の許可を受けることになると思われます。
 監理団体許可を得るためには、およそ6~8か月の所要期間が必要です。

3.実習実施計画の認定
 監理団体の許可が得られたら、いよいよ技能実習生を受け入れる準備に入るわけですが、そのためには実習実施者が実習実施計画を作成し、認定を受ける必要があります。
 実習実施計画とは、それぞれの実習生が実習先でどのような内容の実習を行うのか、きちんと計画しておくものです。
 これを、技能実習機構に提出し、認定を得る必要があるのです。
 実習実施計画の認定には、およそ2か月要し、作成の期間などを考えればおよそ3ヶ月程度は必要です。

4.在留資格認定証明書の交付
 実習実施計画が認定されれば、外国の技能実習送り出し機関から実習生を呼び寄せます。
 技能実習生を外国から呼び寄せる場合には、在留資格認定証明書の交付申請を入国管理局に対して行い、認定証明書の交付を受けます。
 この認定証明書を現地の技能実習生の許へ送付し、技能実習生はこれももって日本大使館や領事館などの在外公館に査証の発給を申請します。
 査証が発給されれば、査証を得たパスポートと在留資格認定証明書をもって、ようやく日本へ入国・上陸することができます。
 在留資格認定証明書の交付申請は、およそ審査に1か月~3か月ほどの期間が必要で、さらに認定証明書の海外への郵送、送り出し国での査証手続きの期間が必要になります。

5.入国後講習
 実習生が日本に入国しても、すぐに実習先で働ける訳ではありません。
 実習生は、入国後1カ月から2カ月の入国後講習を受ける必要があります。
 入国後講習の内容は、日本語教育や日本の慣習・マナーといった日本での生活一般に関することから、入国管理法・技能実習法・労働基準法等実習生の法的保護に必要な情報、円滑な技能等の習得に資する知識などの講習が行われます。
 入国後講習は外部に委託することも可能ですし、監理団体が自ら行うこともできます。

6.実習先へ(実習実施者)
 入国後講習が終われば、実習先での実際の実習に入ります。
 雇用契約はこの時点から発効し、給料の支払い義務が発生します。
 実習先では、先に技能実習機構に提出した、実習実施計画に正確に沿った実習を行うことになります。

 

 以上のとおり、事業協同組合の設立手続きに着手してから実際に技能実習生を受け入れるまではそれなりの時間がかかります。
 また、組合員の職種によっては監督官庁も複数にまたがることも多く、設立後も事業報告書その他作成する書類は数多くあります。
 技能実習生の受け入れに当たっては、その都度在留資格の手続も必要です。
 技能実習生の受け入れをお考えの場合は、できるだけ早めに専門家にご相談いただき、手続きに着手してください。

 

 また、監理団体については、外部役員を置くこと又は外部監査の措置を講じることのいずれかが法律上義務付けられています。
 外部役員を置くにも、講習を終了していなければならない場合があることや監理団体や実習実施者とは無関係な人でなければなりませんので、人選が大変です。
 従って、申請取次行政書士に外部監査をご依頼されることをお勧めいたします。当事務所でも、監理団体の外部監査人に就任させていただいております。

 【弊事務所報酬】
 監理団体の外部監査 年額400,000円~(税別)